できることならエディタだけで編集まですませ、レイアウトが必要ならInDesignで作ってPDFで納めたい……。
でもそうはいかない様々なシガラミが、ぼくをWordに対峙させているわけですが、先日紹介した本とは別にもう一冊、新たなる魅力的な武器を見つけました。

word_otoshi1『もう迷わない! Wordのしくみと落とし穴 2007対応』
西上原 裕明 著
技術評論社
ISBN: 978-4774136431

これも、順序を追いながら、Wordでやりたいことを確実に実現するための方法を、具体的に書いてくれている本です。
そして、「こうやるとうまくいかない」ということがきちんと書いてある。これがいい。

「これはWordの不具合です」
「こうすればよさそうに思えますが、正しい手順はまったく逆」
「(この機能は)使わないことをおすすめします」
「およそ理解しがたい仕様です」

なんて書いてある解説本はあんまりありません。
で、問題の原因がはっきりしていれば、そのことも書いてあるので、無駄な試行錯誤をする必要がありません。

そう、試行錯誤。

Wordで思い通りの結果が得られないのは、すごく分かりにくいながらも、何か守るべきルールや順番があって、それに従ってないからだと思っていました。
でもルールも正しい順番もなく、あるのは、「正しいとは思えないけどこうすれば一応できる」という経路だけだったのですね。
でもそうなると、それは膨大な試行錯誤からしか探し出すことができない。
だから、自分のかわりにその膨大な試行錯誤をしてくれた人の書いたものを読んで、わずか1900円あまりという対価でその成果を利用させてもらえるということのありがたさといったら。

この著者、西上原裕明さんは、本当に実に根気よくWordのしくみを調べています。ページ数としては240ページほどですが、ここまで具体的にまとまった情報として書くには、書かれている何倍もの、相当な努力が必要だったことでしょう。想像しただけで気が遠くなります。
こうしたいんだけどこれはどうすればいいの? なんでこうしてもこうならないの? などと、マイクロソフトの担当者にでも直接ぜひ聞きたい(そうでもしないとわからなそう)と思っていたようなことが、ずいぶん解消されました。
で、読んでから思いましたが、たぶん、マイクロソフトの担当者に聞いても分からなかったでしょうね。
このとおりにすればよい、という道筋が見えているのは(見せてくれるのは)、ほんとうにありがたいことです。

構成もいいし、注釈も図も、的確で必要十分な、ほしいと思う情報がほしいと思う場所にちゃんと載っているし。編集が行き届いています。熊谷さん、いい仕事しています。

前に紹介した本は『エンジニアのための……』とあるとおり、多少、テクニカルな感覚を持っていたほうが読みやすいのですが、この『Wordのしくみと落とし穴』は、ふつうの初心者の人でも抵抗なくささっと読めるでしょう。

それにしてもマイクロソフト。
世界最大のソフトウェア会社が、どうしてこんな不備の多いものを作るのか。

正直、前の本と、この本を読むまでは、ぼくは単にWordのユーザーインターフェースに問題があるだけ(それでも相当な混乱具合ですが)だと思っていたのですが、そもそもの機能の設計や実現にも問題がかなりあることが、今更ながらよくわかりました。
この本のタイトルにある「落とし穴」、これ普通は、使う側が陥りやすいミス、みたいなときに使われる言葉ですけれど、ことWordに関しては、ほんとにマイクロソフトが落とし穴を掘っているのだと言っていいと思います。

Wordがうまく使えないと思っている人は、多いはずです。
普通考えたらこうはならないはずなのに、こんな結果になってしまうのは自分が悪いんだ、何かちゃんとしたやり方があるはずだ……と。
でもそうじゃない。
悪いのは自分ではなく、Wordです。
使えないのが正常です。使えるように作られてないもの。

大河ドラマの『天地人』の脚本があまりにお粗末に感じられ、見続けるかどうかで迷っていたのですが、ある段階から「これはツッコミを楽しむことにしよう」と気持ちを切り替えて、今はけっこう楽しみにしていたりします。
それと同じ気持ちを、Wordにも持てるようになった気がします。