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12
5月

水の上でGPS (GPS-CS3K)

ゴールデンウィークに、ボルネオ島、コタキナバルというところに行ってきました。

行く直前に、ソニーのGPS「GPS-CS3K」を購入。これ単体では現在地の緯度経度を知ることぐらいしかできないので、行っている間はただひたすらログを記録するのみ。飛行機に乗っているときも窓側の席では衛星をとらえていました。帰りは飛行機のまんなかの席だったのですが、ずっととらえることができませんでした。
帰国して地図の上に行程をプロット。
特に今回は水上を移動することがあり、その際に地図をみることがままならなかったので、あとからどこを移動したかを見られるのはとても面白い。

canue

これは、カヤック(カヌー)でのマングローブ林ツアー。青い線がカヤックによる軌跡です。
A地点の水上集落からカヤックで出発。B地点からはマングローブの林の中の水路を抜けていき、C地点でカヤックからエンジン付きの船に移って帰還。

Bに入る前ぐらいにすっかり陽が暮れ、ほぼ天頂に位置した半月の月明かりの元でマングローブの林の中へ。
常緑樹の葉がぼうっと月明かりを反射している中、ところどころにはっきりとした白い点滅、蛍を見ることができました。

軌跡を地図上で拡大してみると、蛍やマングローブを見るために岸に近寄ったところまでちゃんとわかる記録がされています。

mantanani

右の地図はその次の日のダイビング。コタキナバルからバスで二時間、そこから船でマンタナニ島へ。

行きは良い良い、帰りは酔い酔い。いや、ぼくはなんとか酔わずにすんだけれど、風のとても強い日で、おそろしく船が揺れ、小さい船だったので波をかぶってずぶぬれになりながらの帰還でした。なので港に着くのが待ち遠しく、陸地がそばに見えているのになかなか着かない苦しい時間をすごしたのですが、波でスピードが遅かっただけでなく、波を避けて相当遠回りをしていたのでした。
船上では地図を見る余裕などありようもなかったので、GPSのログがなければわからなかったでしょう。

ところでGPS-CS3Kは、デジカメのSDカードをこいつに入れることで、写真に座標データを付加してくれる機能があり、これならMacだけでも使えるから便利、と購入に踏み切ったのでした。

実際にやってみると、間違いなくログが取れているときに撮影している写真でも、座標データを付加してくれないものがあり、今のところまだ原因不明(探求していないだけですが)。座標データが付加できた写真については、iPhoto ’09で地図上にピンが立ちました。

ルートの表示はiPhotoではできないので、付属のソフトでWindows上でプロット。あまり使いやすいソフトではなく、ほかにもいろいろ方法はあるでしょうがとりあえずそれが手軽でしたので。

海外旅行のように広範囲を移動したり、まったく知らない土地に行って、自分で地図を見て動くのでなくガイドについていくような場合、あるいは水の上で場所を特定できないような場合、やはりGPSの記録があると面白いです。

22
4月

懐かしTurbo

開発環境であるDelphiを調べていて、最近はまたTurboシリーズが復活していることを知った。
Turbo Delphiって、今タダで使えるんですね。

procedure
begin
..
end

なんて記述を超久しぶりにみて、ちょっとトキメキましたよ。Parallels上のWindowsに入れてみようか。
製品版のパッケージが、かつてのTURBOシリーズのデザインを踏襲していて、なんかうれしい。

そういえばフィリップ・カーンさんは今はどうしているんだろう……と検索してみたら、新しい会社作って健在のようで何より。
それどころか、iPhone買ってすぐのころに入れてたサイコロソフト(MotionX Dice)は、カーンさんの会社(Fullpower Technologies, Inc.)製だったと今さら知りました。

Wikipediaの「フィリップ・カーン」の項には、1997年カメラ付きケータイの発明ってあって……その前からカメラ付きケータイなんてあるような気がしてたんですが、日本での最初のカメラ付きケータイは1999年9月DDIポケット発売のVP-210だとか。まだ10年たってなかったなんて。

ぼくはフィリップ・カーン率いるボーランド社が出していたTurbo Pascalの大ファンでした。
その理由は
・Pascalという言語そのものがもつ魅力
・非常に高速なコンパイル
そして、
・エディタと一体化した開発環境の軽快な使い勝手
でした。

ダイヤモンドカーソル、ワードスターライクのコマンドによって、フルキーボードから手を放すことなくコーディング、エディットとコンパイル、実行ができ、そしてまたそれらが実に気持ちいいスピードで動きました。

ボーランドにとうてい勝ち目はなかったけれど、もしあのとき、マイクロソフトではなく、ボーランドがオフィススイートの勝者になっていたら……何倍もいいワープロや表計算ソフトで、世界の効率はもっとよくなっていたはず。

# このエントリ、いまどきの人には、なんの話だかサッパリ……じゃろうねえ。

17
4月

逆転無罪判決

最高裁が痴漢事件で逆転無罪判決を出しました。

こうした事件では、でもやったんじゃないの?みたいな発言がよく聞かれますが、問題はやっているかやっていないかではない、ということを銘記しなければなりません。

繊維鑑定などの証拠が何もないにもかかわらず、被害者の証言のみで、一審・二審は有罪になっていたのです。
「被害者がウソをつくはずがない」といった非合理的な解釈によって、証言だけが有罪の根拠となってしまうことに、またそのような判決を出す裁判所があるということに、戦慄しなければなりません。
捜査、起訴、裁判の正当性や公正性の問題であり、国や社会のあり方の根幹を問う課題として注目しなければなりません。

今回は幸いにして無罪判決が出ましたが、痴漢に限らず、やっていないのだから、やったという証拠などあるわけなく、有罪になるはずがない、と思い司法を信じながら裏切られ、どれほど多くの人が刑に服さなければならない絶望を味わってきた(そして今も味わっている)ことでしょうか。

もうひとつ、このニュースで気になったのは、いくつかの報道機関が、無罪判決を受けた人を匿名にしていたことです。
無罪だから匿名にしたのでしょうか。
今回匿名にしている報道機関が、有罪判決のときにも匿名にしていたのかどうか、検索してみたけれど過去記事はことごとくウェブでは見ることができないので、まだ確認できていません。
しかしもし、有罪は顕名、無罪は匿名というルールで記載しているとすると、このような逆転無罪判決の際に、傷つけられた名誉の回復ができないことになります。
ずっと通して匿名にしていたというのなら、いいのですが……でも多くの報道機関は、そうしてはいないように思います。

15
4月

Wordに対峙する武器もうひとつ

できることならエディタだけで編集まですませ、レイアウトが必要ならInDesignで作ってPDFで納めたい……。
でもそうはいかない様々なシガラミが、ぼくをWordに対峙させているわけですが、先日紹介した本とは別にもう一冊、新たなる魅力的な武器を見つけました。

word_otoshi1『もう迷わない! Wordのしくみと落とし穴 2007対応』
西上原 裕明 著
技術評論社
ISBN: 978-4774136431

これも、順序を追いながら、Wordでやりたいことを確実に実現するための方法を、具体的に書いてくれている本です。
そして、「こうやるとうまくいかない」ということがきちんと書いてある。これがいい。

「これはWordの不具合です」
「こうすればよさそうに思えますが、正しい手順はまったく逆」
「(この機能は)使わないことをおすすめします」
「およそ理解しがたい仕様です」

なんて書いてある解説本はあんまりありません。
で、問題の原因がはっきりしていれば、そのことも書いてあるので、無駄な試行錯誤をする必要がありません。

そう、試行錯誤。

Wordで思い通りの結果が得られないのは、すごく分かりにくいながらも、何か守るべきルールや順番があって、それに従ってないからだと思っていました。
でもルールも正しい順番もなく、あるのは、「正しいとは思えないけどこうすれば一応できる」という経路だけだったのですね。
でもそうなると、それは膨大な試行錯誤からしか探し出すことができない。
だから、自分のかわりにその膨大な試行錯誤をしてくれた人の書いたものを読んで、わずか1900円あまりという対価でその成果を利用させてもらえるということのありがたさといったら。

この著者、西上原裕明さんは、本当に実に根気よくWordのしくみを調べています。ページ数としては240ページほどですが、ここまで具体的にまとまった情報として書くには、書かれている何倍もの、相当な努力が必要だったことでしょう。想像しただけで気が遠くなります。
こうしたいんだけどこれはどうすればいいの? なんでこうしてもこうならないの? などと、マイクロソフトの担当者にでも直接ぜひ聞きたい(そうでもしないとわからなそう)と思っていたようなことが、ずいぶん解消されました。
で、読んでから思いましたが、たぶん、マイクロソフトの担当者に聞いても分からなかったでしょうね。
このとおりにすればよい、という道筋が見えているのは(見せてくれるのは)、ほんとうにありがたいことです。

構成もいいし、注釈も図も、的確で必要十分な、ほしいと思う情報がほしいと思う場所にちゃんと載っているし。編集が行き届いています。熊谷さん、いい仕事しています。

前に紹介した本は『エンジニアのための……』とあるとおり、多少、テクニカルな感覚を持っていたほうが読みやすいのですが、この『Wordのしくみと落とし穴』は、ふつうの初心者の人でも抵抗なくささっと読めるでしょう。

それにしてもマイクロソフト。
世界最大のソフトウェア会社が、どうしてこんな不備の多いものを作るのか。

正直、前の本と、この本を読むまでは、ぼくは単にWordのユーザーインターフェースに問題があるだけ(それでも相当な混乱具合ですが)だと思っていたのですが、そもそもの機能の設計や実現にも問題がかなりあることが、今更ながらよくわかりました。
この本のタイトルにある「落とし穴」、これ普通は、使う側が陥りやすいミス、みたいなときに使われる言葉ですけれど、ことWordに関しては、ほんとにマイクロソフトが落とし穴を掘っているのだと言っていいと思います。

Wordがうまく使えないと思っている人は、多いはずです。
普通考えたらこうはならないはずなのに、こんな結果になってしまうのは自分が悪いんだ、何かちゃんとしたやり方があるはずだ……と。
でもそうじゃない。
悪いのは自分ではなく、Wordです。
使えないのが正常です。使えるように作られてないもの。

大河ドラマの『天地人』の脚本があまりにお粗末に感じられ、見続けるかどうかで迷っていたのですが、ある段階から「これはツッコミを楽しむことにしよう」と気持ちを切り替えて、今はけっこう楽しみにしていたりします。
それと同じ気持ちを、Wordにも持てるようになった気がします。

13
3月

また新しい体験をiPod shuffleが

自分の持っているすべての音楽を持ち出すことができたら。
くるくると軽快に回すことでスクロールができたら。
限られた曲数しか持ち出せないなら、好きな曲を集めてランダムに演奏したら。

アップルをすごいと思うのは、機能やユーザーインターフェースを常に「新しいユーザー体験として」提供し続けるところです。
ほとんどの場合、技術そのものはアップルが独自で開発したものではなく、また特別に目新しいものでもなかったりするのですが、アップルが料理すると実に「楽」(タノしい/ラクな)であるユーザー体験に結実します。

今回のiPod shuffleも、そのコピーにある「talk」「しゃべる」という言葉を見ただけで「何だ何だ?」と興味をひきます。

その一方で、アイデンティティはしっかり保つ。
端的に言えば、あの白いコードの維持、です。

これほど小さい本体なら、ヘッドホンタイプにしたり、こんなウォークマンのような形[japanese.engadget.com]にすることは充分可能。コードがあまりじゃまにならないというユーザーの利点もあるはず。
それでも、白いコードを維持したのは、それがiPodとしてのアイデンティティであり、スタイルである、ということなんだと思います。
コマーシャルでも強調している白いコードをなくす、あるいは目立たなくするときがくるかもしれませんが、それはiPodのスタイルの変更なので、ラインナップとして一部の製品のコードをなくすという形ではなく、全iPodのスタイルを変えて新しいアイデンティティを表出することになるのではないでしょうか。

また、培ってきた技術やデザインの中から「強い遺伝子」をきちんと残して伝えてゆく「進化」のシステムを内在しているのが、アップルの芯にある強さです。ただすぐれたデザイナーがいるだけでは実現できない強さ。このことは一度きちんとまとめておきたいと思っていますけれど、ほんとうにすごい。

今回のshuffleで言えば、曲名発話。これはiPodが音声を合成するのではなくMac OS X側の機能であるVoiceOverを使っています。VoiceOverはすでにOS Xのユニバーサルアクセスの機能として使われている技術ですが、それをこのような形で製品の根本的なデザインのベースとして組み込むということ。

これはMacの技術の巧妙な宣伝にもなります。Windowsの同等の機能とその品質においての差を、いわばiPod上でデモンストレーションするようなものです。

そろそろ出てくるSnow Leopardでさらに強化して、それをshuffleでデモンストレーションするということなのかもしれません。


  • www.apple.com/jp/の「この小ささが、しゃべりだす」という文字がきれいじゃないなー、と思ってよく見るとヒラギノではない? 似ているけど、微妙に違う部分が質の違いと言えそう。
  • それにしても「Small talk」とは……。もちろん、このプロダクトを表すのにこれ以上ないほど的確なコピーです。その上で、Macintoshの母たるSmalltalkを想起してしまうコアなユーザーの心もさらにつかんでしまう……なんてことまではコピーの意図ではないと思いますが……でもアップル社内では話題になったろうな。
  • その一方、日本のページにある「話せば、分かる」ってコピーはどうか。「話せばわかる」[ja.wikipedia.org] って、日本ではあんまりいいイメージの言葉ではないのだけれど。