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2009 / 1 / 17

9

写研はどこへ行ったんだ

by ayumu

写研がDTPに参入しなかったことには、それなりの戦略やこだわりがあるのだと思います。

かつてのシェアの正確な数字を知りませんが、「東の写研、西のモリサワ」と言われていたとはいえ、出版・印刷業の数から言えばやはり東京が圧倒的であったはずです。

そうしたシェアにあぐらをかいたとも言えるでしょうが、モリサワが参入したころの初期のDTPの技術を見て、これではうちの技術やデザインが十分に活かせないと考えたのかもしれません。実際、それはそのとおりだったでしょう。

書体だけでなく、文字組みの手法や技術も併せてこそ、という考えによって、フォントだけを売るという判断をしなかったのかもしれません。

その点では、状況は相当良くなったとはいえ、写研が望む高度なものが今すでにあるかというと、そうではないでしょう。

しかし、であるならば、写研はDTPのアプリケーションも独自に作ればよかったのでは、と思わずにはいられません。AdobeやQuarkと協力してもよかったし、満足のいく出力機器も含めてシステムを作ればよかったのに。

ただ、出版やグラフィックデザインの世界が、写研の思いに関わらず、様々な要因でかつてよりはるかに拡がりを持つようになり、あるレベルのプロフェッショナルだけがそれを担うものではなくなったことは動かしがたい事実で、そのことに対応するというのは、その世界に影響力を持つ企業の責任ではないかとも思います。

だから、今でもぼくは、写研にはフォントを出してほしい。今からでもまったく遅くない。ゴナやナールを始めとする書体の魅力はまったく衰えていないですから。たぶん写植を使った経験のある人(それももう少数派なのかもしれませんが)の多くは同じ思いではないかなあ。

ところで、このエントリーで書きたかったのは実はそのことよりも別のこと。

なんと写研はウェブサイトを持っていない。

今どき、ITやネット関連企業であるかどうかに関わらず、ウェブサイトを持っているのが普通です。例えて言えば、ウェブサイトがない企業というのは、電話がない企業とファクスがない企業の間ぐらいの位置づけになるんじゃなかろうか。

写研がウェブサイトをどのように考えて持たないでいるのかわからないけれど、今の社会においては「仕事をする」ための多様な意味でウェブサイトが機能しています。

あるいは、ビジネス上のごくごく基本的なコミュニケーション手段であると言ってもいいでしょう。名刺がないとか、電話番号を聞いても教えないとか、そんなことがビジネス上ほとんどありえないように、ウェブサイトがないというのもありえない、というようにぼくは思います。もちろん、企業によってはウェブサイトを持つ意味がないという場合もありえます。でも写研はそのような企業ではない。
(写研の社員は、メールアカウントもないのかな? shaken.co.jpのドメインは、まったく別の写真スタジオ会社のようです)

一言で言えば、コミュニケーションをとる気がない。少なくとも外からはそう見えます。

そして、写研を知らない人にとっては、写研という会社は存在しないのと同然です。そして前述のように、おそらくは写研を知らないデザイナーや出版関係者のほうが多数派なのです。

「愛のあるユニークで豊かな書体」とは、写研の書体見本帳で使われている見本の文ですが、デザインが内包する愛や豊かさは、コミュニケーションの積極性やオープン性にこそあるのではないかと思うのです。ユニークなだけでは、デザインは成り立ちません。

大塚の、写研の前をたまに通るたびに、そこにビルはあるのだけれど、写研はどこかに行ってしまった、そんな感じがしてしまうのです。

9 Comments Post a comment
  1. RetreatSyndrome
    5月 9 2009

    はじめまして。
     DTP以前は、僕はデザイナーとして写植屋さんに文字組版をお願いしていました。聞いたところによると、写研は日本語組版を重視し、システム、フォント、オペレーター教育をセットとして販売していたようです。よってアップルから日本語フォントの制作依頼があっても断り、そのためアップルはモリサワに依頼しOSAKAフォントが生まれました。
     DTPになり、デザイナーがテキストのハンドリングを出来るようになったこと自体はありがたかったのを覚えています。(イメージが掴みやすい、コピーライターとのやりとりがしやすい、など) しかし、ページメーカーもクオークも日本語組版についてはワープロとどっこいどっこいでダメということで、結局プリントアウトして指定紙として使っていました。
     当時から、「写研のフォントが欲しい」という思いもありましたが、それ以上に「きちんとした日本語を組めるアプリケーション・ソフトが欲しい」と思っていました。文章中で触れておられましたが、写研は、自社のフォントしか使えないというようなプロテクトを掛けてもいいから、一般PC向けに組版ソフトを発売するべきだと今でも思っています。本当の組版ソフトはこれだ、といった気概を見せてほしいと思っています。(エディカラーはかなり良いとは思いますが、もう一歩)

     モリサワはOTFになってどんどん写研に似せたフォントを出していますが、和文数字の扱い方が気に入りません。
     日本でDTPが始まってもう15年くらいになるのに、僕にとっては未だに満足できる状況になりません。まあ、多くの人にとってはなんの不満もないようですが。

     写研はもっと世間にコミットすべきです。なぜフォントを発売しないのか、なぜ既存のDTPソフトはダメなのかについても世間に意見すべきです。実際、日本の印刷物の文字組版は滅茶苦茶なことになってしまいました。そして多くのデザイナー、印刷業界人と意見交換すべきです。何を世捨て人風な態度をとっているのかと思います。日本語組版に人生をかけてきた昔の写研の人の熱い思いはなんで受け継がれなかったのでしょう。シェアの大半を占めていた驕りしかない人が経営を支配しているんでしょうか。
     
     長々とすみませんでした。

    返信
    • ayumu
      5月 11 2009

      RetreatSyndromeさん、
      コメントをありがとうございます。同じ思いをしておられる、しかもデザイナーの方がいて、なんだかうれしいです。

      やはり、オペレーター教育といったことまでセットでないと、という真摯な姿勢が、DTPへの参入を拒んだのですね。そのこと自体は、間違っていなかった気がします。
      DTPのソフトとしては、ぼくもQuarkにはずいぶん苦労させられましたが、今のInDesignはかなり良いと思いませんか? 活字、写植で培われた日本語の文字組版をとても大切にして作られた、と感じています。
      それだけに、オリジナルの組版ソフトを一般向けにこれから出すというのは、相当な資金、ノウハウ(組版についてはともかく、PCやOSに対する)が必要で、ほとんど無理ではないかと思えます。可能性としては、Quarkに全面協力する、というのならありえるかもしれませんが、それにしてもInDesignに対抗できるほどのものを作るのは相当なことです。
      もうかなり遅すぎる。それでも、フォントを出しさえすれば、そこから復活は十分ありえる。ご指摘の数字を含む文字全体のバランスは写研のフォントならではですよね。
      それなのにウェブサイトすら持たないという方針は、ほんとうに理解できません。おっしゃるように、もはや世捨て人です。
      なんとか穴蔵のなかから、でてきてほしいものです。

      返信
  2. RetreatSyndrome
    5月 10 2009

    はじめまして。
     DTP以前は、僕はデザイナーとして写植屋さんに文字組版をお願いしていました。聞いたところによると、写研は日本語組版を重視し、システム、フォント、オペレーター教育をセットとして販売していたようです。よってアップルから日本語フォントの制作依頼があっても断り、そのためアップルはモリサワに依頼しOSAKAフォントが生まれました。
     DTPになり、デザイナーがテキストのハンドリングを出来るようになったこと自体はありがたかったのを覚えています。(イメージが掴みやすい、コピーライターとのやりとりがしやすい、など) しかし、ページメーカーもクオークも日本語組版についてはワープロとどっこいどっこいでダメということで、結局プリントアウトして指定紙として使っていました。
     当時から、「写研のフォントが欲しい」という思いもありましたが、それ以上に「きちんとした日本語を組めるアプリケーション・ソフトが欲しい」と思っていました。文章中で触れておられましたが、写研は、自社のフォントしか使えないというようなプロテクトを掛けてもいいから、一般PC向けに組版ソフトを発売するべきだと今でも思っています。本当の組版ソフトはこれだ、といった気概を見せてほしいと思っています。(エディカラーはかなり良いとは思いますが、もう一歩)

     モリサワはOTFになってどんどん写研に似せたフォントを出していますが、和文数字の扱い方が気に入りません。
     日本でDTPが始まってもう15年くらいになるのに、僕にとっては未だに満足できる状況になりません。まあ、多くの人にとってはなんの不満もないようですが。

     写研はもっと世間にコミットすべきです。なぜフォントを発売しないのか、なぜ既存のDTPソフトはダメなのかについても世間に意見すべきです。実際、日本の印刷物の文字組版は滅茶苦茶なことになってしまいました。そして多くのデザイナー、印刷業界人と意見交換すべきです。何を世捨て人風な態度をとっているのかと思います。日本語組版に人生をかけてきた昔の写研の人の熱い思いはなんで受け継がれなかったのでしょう。シェアの大半を占めていた驕りしかない人が経営を支配しているんでしょうか。
     
     長々とすみませんでした。

    返信
  3. RetreatSyndrome
    5月 10 2009

    はじめまして。
     DTP以前は、僕はデザイナーとして写植屋さんに文字組版をお願いしていました。聞いたところによると、写研は日本語組版を重視し、システム、フォント、オペレーター教育をセットとして販売していたようです。よってアップルから日本語フォントの制作依頼があっても断り、そのためアップルはモリサワに依頼しOSAKAフォントが生まれました。
     DTPになり、デザイナーがテキストのハンドリングを出来るようになったこと自体はありがたかったのを覚えています。(イメージが掴みやすい、コピーライターとのやりとりがしやすい、など) しかし、ページメーカーもクオークも日本語組版についてはワープロとどっこいどっこいでダメということで、結局プリントアウトして指定紙として使っていました。
     当時から、「写研のフォントが欲しい」という思いもありましたが、それ以上に「きちんとした日本語を組めるアプリケーション・ソフトが欲しい」と思っていました。文章中で触れておられましたが、写研は、自社のフォントしか使えないというようなプロテクトを掛けてもいいから、一般PC向けに組版ソフトを発売するべきだと今でも思っています。本当の組版ソフトはこれだ、といった気概を見せてほしいと思っています。(エディカラーはかなり良いとは思いますが、もう一歩)

     モリサワはOTFになってどんどん写研に似せたフォントを出していますが、和文数字の扱い方が気に入りません。
     日本でDTPが始まってもう15年くらいになるのに、僕にとっては未だに満足できる状況になりません。まあ、多くの人にとってはなんの不満もないようですが。

     写研はもっと世間にコミットすべきです。なぜフォントを発売しないのか、なぜ既存のDTPソフトはダメなのかについても世間に意見すべきです。実際、日本の印刷物の文字組版は滅茶苦茶なことになってしまいました。そして多くのデザイナー、印刷業界人と意見交換すべきです。何を世捨て人風な態度をとっているのかと思います。日本語組版に人生をかけてきた昔の写研の人の熱い思いはなんで受け継がれなかったのでしょう。シェアの大半を占めていた驕りしかない人が経営を支配しているんでしょうか。
     
     長々とすみませんでした。

    返信
  4. ayumu
    5月 12 2009

    @RetreatSyndrome
    RetreatSyndromeさん、
    コメントをありがとうございます。同じ思いをしておられる、しかもデザイナーの方がいて、なんだかうれしいです。

    やはり、オペレーター教育といったことまでセットでないと、という真摯な姿勢が、DTPへの参入を拒んだのですね。そのこと自体は、間違っていなかった気がします。
    DTPのソフトとしては、ぼくもQuarkにはずいぶん苦労させられましたが、今のInDesignはかなり良いと思いませんか? 活字、写植で培われた日本語の文字組版をとても大切にして作られた、と感じています。
    それだけに、オリジナルの組版ソフトを一般向けにこれから出すというのは、相当な資金、ノウハウ(組版についてはともかく、PCやOSに対する)が必要で、ほとんど無理ではないかと思えます。可能性としては、Quarkに全面協力する、というのならありえるかもしれませんが、それにしてもInDesignに対抗できるほどのものを作るのは相当なことです。
    もうかなり遅すぎる。それでも、フォントを出しさえすれば、そこから復活は十分ありえる。ご指摘の数字を含む文字全体のバランスは写研のフォントならではですよね。
    それなのにウェブサイトすら持たないという方針は、ほんとうに理解できません。おっしゃるように、もはや世捨て人です。
    なんとか穴蔵のなかから、でてきてほしいものです。

    返信
  5. 伊香保万次
    2月 18 2011

    ネット上では字詰めや禁則が効かないのが許せないのかも知れませんね。

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  6. fukuokamiyako
    2月 21 2011

    写研さんのフォントは綺麗でした。ゴナDBとか好きでした。「愛のあるユニークで豊かな書体」書体見本帳大事にとっておいたのですが。。。どこに行ったかなー

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  7. 3月 31 2011

    写研とモリサワは、DTP以前のワープロ専用機が誕生したときから、将来への展望に違いがあったようです。

    今や懐かしいワープロ専用機は東芝やキヤノンが開発しましたが、当然のことながらフォントを持っていませんでした。そこで、写研にお願いしたところ、けんもほろろに断られましたが、モリサワは1書体100万円で販売したということです。そのため、ワープロ専用機はモリサワのフォントが使われることになりました。

    その後、Macintosh版のQuarkXpressとともに、モリサワの細明朝体と中ゴチック体がDTP用のベクトルフォントとして開発されました。

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  8. Hoge
    4月 20 2011

    OSAKAってモリサワのデザインでしたっけ?

    ワープロ専用機でモリサワの書体を搭載していたということも不勉強で知りませんでした。
    具体的にどの製品に搭載されていたのかご存知の方に教えていただきたいのですが。

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