りえノラ
今月初めに見ていたのに、書きそびれていました……。
Bunkamuraで、宮沢りえ主演『人形の家』。
岩波文庫で『人形の家』を読んだのは中学のときか高校だったか……いずれにせよ、当時のぼくはそれなりに影響を受けた作品でした。
なんとなく肌で感じていた、おそらくは家父長制を基盤とする社会の空気にいらだちを感じていた頃だったので、勇気づけられた、という面があったかもしれない。既存の価値観に対する異議申し立て、していいんだ、という。
そして、ノラのように自立した精神を持つ女性、精神を目覚めさせた人の格好良さ。ああ、こういうのがいいよなやっぱり、と思った覚えがあります。フェミニズムというものの、言わば生きる姿勢というものを初めて作品の中に知った経験でもありました。
同時に、そういう人が持つ孤独というものの片鱗も感じていたような。
ただそれ以来、たぶん一度も読んでいなかったので、それほどちゃんと覚えておらず、今回初めて劇でこれを観る機会を得、ストーリーからしてなかなか楽しめました。
宮沢りえは、ぼくの抱いていたノラとは少し違うイメージ(これは観る前から予測していましたけど)ながら、前半の「かわいさを演じる」ノラと、ラストで自立を決意するノラ、両方にとてもよく合っていて、なかなか迫力がありました。まあ、中高生が抱く、子どもをもっている女性のイメージと、今の年齢になったぼくが抱くイメージはそもそも違うので、作品で描かれているノラのイメージと違うということではありません。むしろ逆かも。
若い頃の彼女には、特別にあまり興味がなかったけれど、年齢を重ねるごとに、魅力が増している気がします。若いうちに、ずいぶんいろいろな経験をしたことも「きれいな模様になって出て」きた、ということでしょう。
『北の国から』の彼女の役と演技がとても心に残っているのですが、今回のノラも、同じように心に残りそう。
席がやや後ろのほうだったので、一番前で見たかったな。