貧困への視線
貧困は、日本の社会では、まだ全体の問題になりえていない。
一部の貧困はそれが一部のものでしかないように見せられている。
すでに全体の問題であるはずだし、そう遠くない将来……というよりはもうすぐに、多くのひとの実感を伴ったものになることはあきらかだが、しかし、日本では貧困は隠蔽されている。
日本社会には、貧困という問題はないかのように扱われている。
そして、もし貧困があるとしても、その原因は当事者のせいである(せいでしかない)かのように見せられていて、ひょっとすると当人たちもそう思ってしまっているかもしれない。
生活保護を受ける人たち、路上生活者たち、ネットカフェ難民、そうした人たちは自分とは違う種類の人である、かのように報道されるし、その報道を受ける人もそれを疑っていないようにみえる。
違う種類の人であるとすることで、報道は人々に安心感を与え、そのとおりに人々は安心する。
そのように見せているのは、貧困を個人の責任とし、社会、つまりは国や地方公共団体の責任ではないとしたい人たちの意図するところだろう。
そして一部の(あるいは多くの)為政者は、そういう意図以前に、貧困の実体を知らないし、知ろうともしておらず、「違う種類の人」であり、なおかつ、自己責任の問題として、彼らが単に「怠け者」であったり、分不相応な生活を望んでいるのだと思っている。
そのような為政者を選んでいるのは、報道によって安心してしまっているぼくたち自身だ。
ぼくたちはもっと知らなければいけない。
「貧困」というお題を与えられて、当初「書くことが思いつかないなあ」と思っていたぼくは、書くことがないのではなく知らないのであり、ぼくのいる社会に、ぼくのすぐそばに、ぼくのとなりに、貧困が存在していることを、やっぱり見ないようにしてきているからにすぎなかった。
マスコミの報道は、貧困や貧困者を、遠くから、あるいは、はるか上のほうからの視線で伝える。
だがぼくらには今ネットがある。貧困を知り、関わり、あるいは貧困の中にいる人の知識や経験や声を得ることができる。
新聞、テレビ、そしてそれらをソースとするYahooニュース、mixiニュース、2ちゃんねるのニュース板だけで、世の中の出来事がわかっている気になっていてはいけない。それらが伝えていることはほとんど同じことばかりだ。世の中のほんの一部を、ごく狭い視野で同じように伝えているだけだ。
オルタナティブなメディア、オルタナティブなサイトからの情報を積極的に(ここが肝心…そうでなければ「ほとんど同じこと」の洪水に流される)手にいれて、内容の違いに眼を向けて、その中から自分の頭で問題を整理し、理解しなければならない。
なんだかあたりまえのことを書いているようですが、書きながら、自分のこの分野への無知、あたりまえのことがまだまだできていないということにあらためて気がついて。
以下に、ぼくがよく読んでいるオルタナティブ・メディアを挙げておきます。
(こんなのもあるよ、というのがあったらぜひ教えてください)
サイト
・JANJAN
「OhMyNews」無き後(というかあった時から)市民ジャーナリズムがあるとすればここ。
・berita
なかなか一般誌・一般紙ではよめない骨太な記事が読めます。
・NPJ
1ページで一覧できるニュース。メジャーもマイナーも含めた「市民のため」のニュースソース。
※ブログもいろいろあるけれど、きりがないので今回は省略……
メルマガ
・PUBLICITY
発行者の個人的な視点が冴えていて、ものごとの「見方」を得られる、読んでいて楽しいメルマガ。
・マッツ・ザ・ワールド
松沢呉一さんのメルマガ。出版の現状、東村山問題をはじめとして……というか実に多岐にわたるテーマに対し、綿密な調査と深い論理思考で迫る。関連サイト「黒子の部屋」。
PDFマガジン
・pdfX12
登録すると月刊のPDF「写真雑誌」をダウンロードできます。pdfX12とはPhoto Documentary Folio X 12の略。写真が物語る力は、やはりすごい。(サイトの作りがわかりにくいので、個人的に、なんかお手伝いしましょうかーと声かけてみています)
雑誌
・SIGHT
ロッキング・オン/渋谷陽一らしい長文インタビューによる、政治・社会問題誌。毎号面白いです。
・DAYS JAPAN
コピー「一枚の写真が国家を動かすこともある」が力強い、フォトジャーナリズム誌。
・ビッグイシュー日本版
街中でホームレスの方が販売しています。ホームレスの生活を支援する雑誌。見かけるといつも買っていますが、号を追うごとに中身もレイアウトも良くなり、ホームレスと、彼らを支援する視点を得るのにも貴重な情報源。
・週刊金曜日
少し前に雨宮処凛氏が編集委員に加わって、いい効果が出ていると思います。基本は定期購読誌ですが、大手書店にもおかれています。