田中・川田の反対が解せない
少し時間がたってしまいましたが、今月初めに成立した国籍法の改正。外国人と日本人との間の非嫡出子に対して国籍を認めるという、最高裁の判決に沿った内容です。
これに対していわゆるネット右翼を中心に人々が大きく動いて、国会議員に大量にファクスを送るなどの活動をしたようです。偽装認知によって、本来与えられるべきでない人に国籍が与えられてしまい、特に性的な商売を目的として外国人の子どもが大量に入国することになってしまう、というような論です。
こうした反対派の意見は「まとめWIKI」にまとめられていますが、基本的な法律の知識に基づいていないと思えます。多くの法律家や法律学徒があちこちで解説をしてくれていますが、例えば今回の改正の元となった最高裁判決に関わられた弁護士によるこのブログ [blogs.yahoo.co.jp]あたりが詳しい。あるいは判決に対するニュース解説 [nhk.or.jp]で偽装認知の杞憂について簡潔に述べられています。
まあ、意見は異なるけれど、そうした行動そのものは、べつに悪いことではないです。コピペだろうとなんだろうと、市民の声として国会議員に伝えるという行動は大切だと思います。
橋下氏による扇動で松本智津夫の弁護人に懲戒請求を求める行動を起こしたのと同様の、あまり考えていないお祭りノリでやってしまうのは、それに対応しなければならない人手について思えば誉められたことではないです。とはいえ、ノリがどうだろうと意見を出す行為に対応する人手を惜しんではならないのが民主主義でもあります。
そして、市民がすべてのことについて考え尽くして行動することもまた難しいですから、これはむしろ行動を起こすための材料を提供する側、当事者やメディアによる情報発信の問題でしょう。
それともうひとつ、国会議員。
今回、実に解せないのは、田中康夫さんと川田龍平さん、このふたりの国会議員が同法案に明確に反対を表明したこと、です。
いずれも、ぼくがとても信頼しているふたりで、それこそあまり考えずに行動するような人たちではないはずなのに、今回ふたりが発している言説をみるかぎり、うーんとうならざるを得ません。
差別や人権に対して敏感でまっとうな見識を持つはずのふたりが、なぜこんなことを言っているのだろうか。
ちなみに以前、ぼくが笹塚のシアターで川田さんを見かけた [kazeiro.com]ときに一緒だった結婚したてのお相手は、堤未果さんというジャーナリストだったんですね。不勉強にも知りませんでした。で、堤さんもまた同様のご意見のようです。
議員やジャーナリストは少なくとも法律家のブレーンを持つべきなんじゃないか。
ちゃんとした知識を仕入れずに主張しているとすれば問題だし、もし知識を仕入れた上で、さらに反対表明をしているのなら、彼らに対する評価を変えないといけないかも……。時間の経過とともに言説が変わるかと注目していたのですが、変わる気配なし。うーん。
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本件について興味のある方は、とても詳しい解説が、法律学徒でありMIAUの発起人でもあるinflorescenciaさんのブログ [hatena.ne.jp]にあります。