Skip to content

2009 / 1 / 21

無料冊子にも同人誌にもISBNを

by ayumu

個人として会友になっている「版元ドットコム」のメーリングリストで、無料の目録にISBNを付けることについて話題になっています。版元の方々のいろいろな意見があって、とても興味深いです。

ぼくはISBNというコードの存在を、かなり評価しています。実にありがたいものと思っています。

それはISBNが、特定の情報(のパッケージ)をユニークに識別することが可能な統一的かつ標準的なコードである、という点に尽きます。

ウェブサイトやそれに含まれるページがURIを持っていて、ユニークに情報を特定できるように、書籍もISBNによってユニークに情報を特定できます(ISBNもURIとして記述できます)。

そしてウェブよりISBNが良い点——というよりは「今ISBNがつけられているメディアの良い点」か——は、情報が固定されていること、そのため情報パッケージの中に含まれる特定の部分的な情報を厳密に識別可能なこと、です。

ウェブは公開後もいくらでも改変でき、またページごと、ドメインごと無くなることもよくありますが、一度出版された書籍は、仮に物理的にすべて失われようとも「無かったことと同じ」になることはありません。

そして書籍の中の特定の一文一語は、ページ数、行数、文字数などで特定できます(通常、版が変わってもISBNは変わらないので、厳密には場所が変わったりなくなったりして特定できない場合もたまにありますが)。

ウェブでは文字の大きさも一行の文字数も固定的ではありませんし、文字数をカウントすることは可能であっても、どのようにカウントするのかの決まりや定義、しくみがないので実質的に意味がありません。そのためページの中の一部の情報を指し示す方法がありません。

情報をデジタルとネットワークで有効に使うため、つまりは人間が情報を存分に駆使するためには、あらゆる情報にすべからくユニークなコードがつくべき、と思います。

既存の体系では、URIがそれをもっとも近く体現しているのですが、それでも、情報のありかを指し示すだけで、情報そのものの特定の位置を指し示すのには充分ではありません。ですがISBNのついているメディアは、今すでにそれができます。

そういう意味で、ぼくは当然、目録など無料の頒布物にも、ISBNがついてしかるべき、と考えます。

ところが現状のISBNは、「情報をユニークに特定するコード」という側面よりも、「流通や販売の管理のためのコード」という側面が強く(そうでなければこれほど普及しなかったでしょうが)、それがゆえにISBNは単なる情報識別コードからはみだして、その情報がもっている「意味」をも識別するコードになってしまっているようです。

上記メーリングリストで初めて知りましたが、コミケではISBNがついている冊子を商業印刷物とみなして販売をさせていないとのこと。
情報を特定するコードという視点からは、同人誌にもぜひISBNつけてほしいところです(出版者記号をどうするのかなどの課題はあれ)。有料で販売していても同人誌は「商業印刷物」ではなく、ISBNもつかない……理由はわかりますが、すっきりしません。

まあ、ISBNによって完全にユニークに識別できるかというとあやしいところもありますし(将来のことも含め)、用途が違うよということなのかもしれませんが、とはいえこれから別の体系を作って普及させるなんてほとんど不可能ですから、主たる目的は流通などのためにせよ、情報識別子としてもちゃんと利用できるように運用してもらいたいと、一情報ユーザーとしては思うのです。

コメントを残す