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20
3月

細やかなアップルデザイン:あえて変化しないポインタ

Mac OS Xでのウインドウ四隅でのマウスポインタの変化。
ウインドウの隅では通常、マウスポインタは斜めにウインドウを拡大縮小できることを示す形状に変化する。

例えば、ウインドウ左上端では斜め両端矢印にポインタが変化する。

ウインドウ左上端ではポインタ変化

しかし、フルスクリーンにできるウインドウの場合、右上の角でのみポインタが変化しない。
ウインドウ右上端ではポインタ変化しない

フルスクリーンにできるウインドウの右上端には「フルスクリーン化ボタン」のアイコンがある。
このアイコンと、ウインドウ拡大可を示すポインタの形が似ているので、「このポインタ形状の状態でクリックするとウインドウがフルスクリーンになる」という誤解を生む可能性がある。
そのようなアイコン形状のコンフリクトを避けるためだろう。

ただし、この状態でもウインドウの大きさを斜め方向に変えることはできる。

操作可能であることの明示よりも、誤解を生むのを避けることを優先。
本来であれば「できるんだなと事前に確認できて、やってみてできる」のがベストだが、「できないのだろうと思ってやらなかった」というマイナスよりも、「できるのかなと思ってやってみたらできなかった」というマイナスのほうが大きい、という判断をデザイナーがしたということ。

一方、フルスクリーン化できないウインドウの場合は、ウインドウ右上端にフルスクリーン化アイコンが存在せず、したがってアイコンのコンフリクトがないので、ポインタはちゃんと変化する。

フルスクリーン化できないウインドウの右上端ではポインタは変化する

当然この状態でウインドウの大きさを変えられる。

こういうことをちゃんと考えて、一手間かけている(フルスクリーン化できるウインドウの右上隅だけ変化しない、という例外処理をわざわざ入れている)ところが、アップルのデザインの細やかさ。

おまけ

このインタラクションはアップル製だけでなく、他社のソフトウェアでも同じ。

Word, PowerPoint, Excelでも同様。よしよし。

しかし、
最新のOneNote for Macはなんと……OneNote for Macにはこの細やかな配慮はなかった

コンフリクト。

MS、だめじゃん。
何も考えないとこうなります、という悪い見本、でした。

 

24
1月

Happy Birthday, Macintosh.

Macintosh、インターネット、iPhoneの誕生を目の当たりにできる時代と場所、環境にいられたことは、本当に幸福なことであった。そしてこれらのいずれにも、自らの仕事として深く関わり続けられてきたことも。
しかし、これらはぼくにとって、単なる道具ではないし、単なる商売のネタでもない。
いずれも、情報を力とすることで人類が大きく文明を変えてゆく、そのエンジンやインフラであり、したがって自由と民主主義を進めるための武器であり、また人間が単調な作業の繰り返し、移動や運搬にかかる時間を省き、創造的な作業や豊かな相互理解にその短い人生をかけることができるようにするための、身体や脳の延長であり、だからこそこれらにぼくは希望を抱き続けてきたし、これからも抱いてゆく……そう、この社会にあって、これらは数少ない希望だ。
タンクトップの女性アスリートがハンマーをビッグブラザーに投げつけた30年前の映像(※)は、人々を自由にする道具——Macintosh——を提供するというアップルの宣言だった。そして、1984年のあのときよりも今の日本はずっと『1984』に近づいていはしないだろうか。

アップルはずっと哲学を抱き続けてきたと思う。前のエントリーに書いたように、ジョブズ追放の間も、その哲学は残った者たちの中で地下水脈として生きながらえていた。
ジョブズ亡きあとのアップルがその哲学をどう継承するかはまだはっきりとは見えないが、しかしながら、アップルとジョブズが、言葉ではなく、その製品とサービスのありようによってこそ伝えてくれたものは、ぼくのような者の中にも血となり肉となって息づいている。

キヤノン01ショップに毎週末通っては、展示されていたデモ用のMacintoshにかじりつき、そこにコンピュータと人の関わり方の未来を感じてワクワクしていた若者も、いまや50過ぎのおっさんである。
Macは初めからすばらしかったが、それでも著しくマイナーな環境だったから、ぼくはいつもアップルが無くなることを、Macが無くなってしまうことを恐れていたような気がする。
それがどうだろう。
あれから30年もたった今こうしてぼくは、左上にあのときと同じようにアップルマークのある画面で、こうしてテキストを書いている。

Happy Birthday, Macintosh.

 

3
11月

映画『スティーブ・ジョブズ』

ぼくにとっては、この映画にでてきたエピソードのほとんどは知っていることだったけれど、何も知らない人が映画を見たら、ジョブズという人間にどういう感想を抱くのだろうか。彼の実際の魅力や、なぜアップルに返り咲けたのかというところはいまひとつ伝わらないんじゃないかなあという気がしないでもないのだけれど。

ぼくがMacの雑誌を作っていたのは、ちょうどジョブズがアップルにいない期間で、Macintoshの筐体のデザインがどんどん劣化していくのを絶望的な気持ちで眺めていたのだが、とはいえジョブズがいてくれれば……ともあまり思ってはいなかった。あの頃のジョブズは、「デザインの好きな毀誉褒貶の激しいビジネスマン」といった印象でしかなく、「ふたりのスティーブ」として並べたらもちろんウォズのほうが大好きだった。
返り咲いてから作った初代iMacのデザインはなるほどと思わせるものだったが、ぼくの好みではなかった。

ジョブズへの見方が変わってきたのは、たぶんiPodあたりからだろう。iTunesストアの実現、そしてiPhoneが決定的だった。
あれから彼はぼくのヒーローになった。……ぼくのヒーローになっていたのだ、と気づいたのは、彼の死を知ったそのときだったけれども。

今から思えば、Apple IIもMacintoshも、ぼくがドキドキしていたデザインの中に刻みこまれていた強い思いの多くはジョブズのものだったのだが、技術や、時代や、経営や、彼自身の問題から、それがまっすぐに世の中に提出されていなかったのだろう。
だから映画の中で、若きジョナサン・アイブ(役者の顔はそっくりというわけではなかったが、口調・発音は実にそっくりだ)がジョブズに、「あなたの考えを実現したくてここにいるんです」と言い、iMacのデザインについて熱く語るシーンには、目頭が熱くなった。

でももっと、彼とアップルのチームによるデザインの実現の過程を、ドラマとして観たかった。カリグラフィへの興味とフォントへのこだわりが結びついて描かれてなかったし(そのこだわりも、結果の成功のシーンがないので、なんだか部下をいじめる上司を描くためのネタになってしまっていた)、何よりPARCのエピソードがそっくり無いというのは残念すぎる。ビル・アトキンソンと、アンディ・ハーツフェルドのウィザードぶりも見せてほしかった。ジョブズがアトキンソンを外に連れ出して角丸四角形の重要さを説得するシーンも見たかった。それに、ただのダメなおじさんにしか描かれてないジェフ・ラスキンが悲しかった。

まあこんなふうに「ジョブズの何が描かれるのか」「どの時代のどんなことがどのように扱われるのか」ということにどうしても意識がいって観てしまっていたので、映画としてどうなのかという評価については、することができないでいる。

しかし、映画の1時間半で描かれるには短すぎる人生であったことはたしかだ。1年間の大河ドラマに十分なりうるだけの濃い人生。
あらためて、そんな人生をもった人と同時代を生き、その人のすることをリアルタイムに見、その結果を手にしてこられたのは幸せだったな、と思った。

もう2年がたつのか。

4
8月

Wordの履歴機能で、自民党が変えた憲法を見てみる

現行憲法と自民党の憲法草案の違いは、自民党自身の草案PDFでも対照して表示されていて明確ではあるのですが、現行憲法のテキストと草案のテキストを並べて見比べないと、何を削って何を加えたのかがわかりません。

そこで、MS Wordの「校閲」機能の編集履歴保存と表示を使って、ひとつのテキストで変更箇所がわかるようにしてみました。

pdficon_large自民党による憲法の「変更履歴」 (PDF 約450KB)

自民党による憲法の「変更履歴」の一部

目視で比較しながら手入力していったので、間違いもあるかもしれません。もし間違いを見付けられましたら、PDFに記述したアドレスまでご連絡いただけるとありがたいです。

なおテキストが移動されている部分もいくつかあるのですが、移動部分の「削除」→「挿入」という形で表示されています。その点ご了承ください。

追記

HTML版も作成しました。ブラウザで見る、特にスマホで見る場合にはこちらがいいかも。

自民党による憲法の「変更履歴」HTML版: http://editorium.jp/kenpo/const.html

1
8月

「メモ」のアイコンにも、すごく汚い「Think Different」が。

Mac OSのテキストエディットのアイコンに、往年のアップルのCM「Think Different」のコピー「Here’s to the crazy ones. …」が書かれているのは、割と有名です。

textedit

で、「メモ」のアイコンにも何か書いてあるけど、いわゆるミミズののたくったような字で、意味のあるものだと思っていませんでした。

memo

ですが、待てよ……と思って対照してみたら……これもどうやらThink Differentのようですね。すっごい汚い(くずした)字で書かれた……。

解読つき↓

memo_crazy

 

 

 

おまけ。Jeditのアイコンに書かれているのは、竹取物語のクライマックス、天の羽衣の一節。

jedit